コラム

  • HOME
  • コラム
  • 日本におけるBPO利用の意識が低い理由とは

日本におけるBPO利用の意識が低い理由とは

戦略的BPO利用の意識が低い理由

日本企業の多くはBPOをコスト削減の手段として認識しているため、戦略的なBPO利用への意識が低いと考えられます。
現にBPOを利用する日本企業の多くは連結対象や資本関係のあるBPOベンダーへアウトソーシングしており、コスト削減や効率化以外の効果をあまり感じていない傾向にあります。
BPOの戦略的価値(コア業務への集中、(BPOベンダーの)専門的知識・スキルの活用、業務プロセス改善等)への理解を広める必要があると考えられます。

BPO利用により生じる人材の処遇の困難さ

BPO利用に伴う人材の処遇が困難な主な理由

  1. 従業員の解雇が法律で制限されている
  2. 社内における戦略的配置転換が困難(戦略業務が定義できていない等により)

が挙げられます(経済産業省によるベンダ、米国学識者等へのヒアリング)。

BPO事業者に関する情報不足

BPO未経験企業は、セキュリティなど基礎的なサービス水準不安を持つ中で、「BPOベンダ企業に関する情報が少ないことによりBPOベンダー企業を信頼しにくい」と感じています(平成20年度経済産業省BPO研究会報告書)。
そのため、日本企業は「アウトソーシング事業者の能力を客観的に評価できる指標・認定制度」へのニーズが高まっています。
一方で、米国では「ユーザー企業間でBPOベンダに関する情報交換を行うコミュニティが存在し、BPOベンダのサービスを情報共有・評価している」(経済産業省による米国BPOベンダーヒアリング)。

BPOベンダーによる効果が出にくい中小サービス業

中小サービス業でBPOが遅れる理由としては、中小サービス業は間接部分が小さく、間接業務のコスト削減メリットが小さいことが考えられます(一般的に間接部門は社員の数%)。
BPOベンダー側から見ても、規模のメリットを活かせるだけの一社のロットがないため、中小企業を顧客とするビジネスモデルになっていません。
しかし、近年こうした中小サービス業等向けに、クラウド技術と組み合わせて中小サービス業にも効果の高い新たなBPOが現れているが、特に中小サービス業にはあまり知られていません (経産省によるBPOベンダへのヒアリング)。

なお、米国では、PEO(Professional Employer Oganization)という雇用制度が存在し、特に中小企業の人事業務のBPOを容易にしている。

中小サービス業におけるBPO利用事例

飲食業A社

年商約一億円、従業員30名程度。都内居酒屋等3店舗を経営。
月額制の記帳代行サービスを活用。これまで経営者家族で行っていた仕入れ等の記帳作業等をアウトソーシング。
BPOベンダは、ユーザーから送られてきた伝票・領収書を集計・記帳し、クラウドソフトを通じてユーザーにリアルタイムの記帳情報をフィードバック。
BPOベンダ内では、クラウドを使った自動化やマルチロケーション(在宅勤務の活用等)により、記帳代行を効率化。月額の低価格サービスを実現しています。
ユーザーは煩雑な記帳業務を安価にアウトソーシングすることで、自社のコア業務への集中が可能になります。

(参考)米国の共同雇用制度(Professional Employer Organization)

全社員をPEOとの共同雇用します。企業は従業員の第1雇用主として業務命令権などを行使しつつ、第二雇用主のPEOが雇用関連業務(税納付、保険、給与支払、福利厚生等)を請け負う形態です。

月額制の記帳代行サービスを活用。これまで経営者家族で行っていた仕入れ等の記帳作業等をアウトソーシングします。

  1. 中小企業は、責任関係も含め煩雑な雇用関連業務コストを削減可能。
  2. PEOが大規模化することで福利厚生が充実し、従業員の待遇が改善。

中小企業を中心に広まり、2012年には920億ドルの市場規模に成長しています。日本では使用者と従業員(派遣契約の場合、派遣元と従業員)間でしか雇用契約は認められておらず不可能なのが現状です。