DXとは(2/2)

DXとは(2/2)

その他2023.03.07

DXとは

前回のコラムでは、DXの定義や意義をおさらいした上で、他国と比較した日本のDX推進の現状について整理しました。
第2回目となる今回は、日本と中国の具体的なDX推進事例を基に、日本が今後取り組むべきDXのあり方について考えてみたいと思います。

1.日本のDX事例(すかいらーくホールディングス)

日本のDX事例(すかいらーくホールディングス)

株式会社すかいらーくホールディングスでは、ITデジタルを活用した顧客満足度の向上と、従業員の働きやすい環境整備を目的として、2019年のキャッシュレス決済の推進を始め、2020年には客席にデジタルメニューブックを設置するなどを行っていました。
そして、さらに2021年8月からはフロアサービスロボットの導入を開始し、2022年12月21日に発信されたプレスリリース 『【すかいらーく】 約2,100店に3,000台のロボット導入完了』 によると、同月27日に 「ガスト」「しゃぶ葉」「バーミヤン」をはじめとする全国約2,100店舗に3,000台のロボットの導入を完了するとのことでした。

フロアサービスロボットの導入効果として、ランチピークの回転率が2%向上し、片付け完了時間は35%削減され、従業員の歩行数は42%も削減できたとあります。
また、グループ傘下の「ガスト」、「バーミヤン」、「ジョナサン」などの67店舗で実施された利用客(1,670名)へのアンケートでは、9割のお客様が「満足」と回答したとのことです。

2.中国のDX事例(銀泰百貨)

中国のDX事例(銀泰百貨)

高級品を正価で販売する百貨店では、顧客が商品を見に来るだけで、気に入った商品の購入は同じ商品が安く手に入るEC(Electronic Commerce:ネット通販)を利用するというショールーム化に苦しんでいます。

銀泰百貨は中国に28店舗を展開する大型百貨店で、高級品を扱う伝統的なスタイルの百貨店ですが、独自のECアプリを使った店舗型ECも同時に展開し、大規模な投資を基に化粧品売り場に関しては10km圏内2時間以内配送を実現しています。
銀泰百貨の店舗は、オフィスの多い市の中心部に立地することが多いため、忘れ物や突然必要になった等のニーズが相当数あるとのことです。
また、カウンタースタッフがショートムービーを撮影し、販売商品の紹介を行う取り組みも行っており、チャットで商品の詳細について尋ねることも可能です。

こういった取り組みで、商品が決まっている消耗品の補充購入客は自然にECに流れ、店舗には新しい商品を探してカウンタースタッフのアドバイスがほしい顧客が訪れるようになり、スタッフの業務負担は減り、販売コストは削減されました。結果、売上は増加し、その利益は会員向けに優待クーポンを配布することで還元しているとのことです。

「2018ー2019中国百貨小売業発展報告」(中国百貨商業協会)によると、調査をした90の百貨店チェーンのうち、38チェーンの売上が前年割れになった中、銀泰百貨では37%も伸ばし、中国の百貨店チェーンの中では最高の伸び率となっています。

3.なぜDXが日本で進まないのか

なぜDXが日本で進まないのか

すかいらーくグループのように、DXを積極的に推進している企業もありますが、まだまだ日本では海外に比べてDXが進んでいない傾向にあります。
経産省ではDX推進を強く謳っていますが、実際にどうすればDX推進できるのか、企業側はまだ明確にイメージをしにくい段階にあるのかもしれません。

実際、経産省が行っているIT導入補助金を見てみると、『「IT補助金」でIT導入・DXによる生産性向上を支援!』とありますが、実際に4つの補助金枠を見てみると、業務効率化の意味合いが強いと感じます。
確かに、DXを推進する過程で業務の効率化は避けて通れませんが、だからと言って、業務効率化がゴールになってしまうと、効率化の先にある新しいビジネスモデルの構築という段階に至れません。

ちなみに、レストランテック市場動向レポート2022(「レストランテック協会、ファンくる共同調査」)によると、消費者側の高い期待感とは裏腹に、飲食DX指標の評価は10段階中の「2」に留まっています。
企業側の意識は、DXに「無関心」または「否定派」だけで6割近くにのぼり、DXを推進する必要性を感じていない風潮が浮き彫りになっています。
しかしながら、利用者の過半数は飲食店のDX推進を望んでおり、その声に答えるためにDXを推進するとなると、利用者に喜ばれ、企業側も業務効率化が可能なキャッシュレス決済サービスに目が向けられやすく、結果としてそれらがもっとも進む傾向にあるのだと思います。

4.日本のDXは企業目線の効率化?

DXが進まない原因でも挙げたように、企業側はそもそもDXにいたる前段階の「デジタル化」が十分に進んでいないことから、DXを推進するためにまずは内部の業務効率化をするといった動きが強いように感じます。

また、業務の効率化を実現するには、それだけで人材の確保やコストの負担が生じます。それがDXという次のステップに進むことを躊躇させる要因となり、「業務効率化したら時間ができて、サービスが向上したからDXしたと言える」にとどまってしまう傾向にあるのかもしれません。

5.中国はお客様の傾向によって視点を変えている?

一方、中国でのDXでは、実店舗よりECの方が価格が安く、顧客に利用されやすいことに目をつけ、自社でECサイトの構築をしたり、ECサイトでの購入を増やすために実店舗のスタッフによる宣伝や、チャットでの質問受付などを行うなど、顧客のニーズに合わせながら、より満足してもらえる方法を考えているように感じます。

6.まとめ

日本では、DXを推進していくにあたり、内部のシステムを変えていく必要があり、まだまだビジネスモデルの変化には至ってはいません。

日本人の良さでもあり、短所となってしまっている慎重さにより、現状を大きく変化させてはダメだ、失敗は許されないという意識が強いのもDXが推進されない原因の一つにもなっているかと思います。
いきなりビジネスモデルを変化する!と意気込むのではなく、中国の例の様に顧客との接点にSNSを活用するなど、小さなことから始めてみるのはいかがでしょうか。

これから世界的にも、また日本でもDXを推進する動きが強まっていくと思います。
日本のおもてなし精神とデジタル技術が合わされば、新たなビジネスモデルを構築でき、世界的にも注目されると期待しています。
  DXの鍵はデータ連携にあり!