DXとは(1/2)

DXとは(1/2)

その他2023.02.27

DXとは

1.DXとは

DXとは

「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉は、当時スウェーデンのウメオ大学で教授を勤めていたエリック・ストルターマン氏によって、2004年に執筆された論文『INFORMATION TECHNOLOGY AND THE GOOD LIFE』の中で初めて使用されたといわれています。
同論文の中で、氏は「デジタル・トランスフォーメーション」のことを下記のように提言しました。
” The digital transformation can be understood as the changes that the digital technology causes or influences in all aspects of human life.”
(訳:デジタル・トランスフォーメーションは、デジタル技術が人間の生活のあらゆる面で引き起こす、または影響を与える変化として理解することができます)

日本語版のWikipediaでは『情報技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面で良い方向に変化させる』と訳されています。

  後年のインタビューにおいて、エリック・ストルターマン氏はこの論文を発表した当時、インターネットや携帯電話の急速な普及に伴って、デジタル技術が大きな社会発展につながるという認識が世の中に浸透し始めたと感じていた、と述べています。
情報技術により、日常生活のすべてが日々刷新され始めていた当時、技術の変化のみならず、技術によって人間の「lifeworld(生活世界)」がどのように変化するかを、より深く理解するために、自分たち情報システムの研究者が取るべき調査研究とはどうあるべきかを説く……そのための論文だったと言います。

その様な想いや経緯で定義された「デジタル・トランスフォーメーション」という幅広い概念を含む言葉も、時間と共に現実に即した形で具体化します。
広義のDXと企業にとってのDX

DX(デジタル・トランスフォーメーション)のトランスフォーメーションとは、英語で「変化・変形・変容」を表します。
つまり、「デジタル化により社会や生活の形・スタイルが変わること」が、DXの辞書的な意味と言えます。

経済産業省の『産業界におけるデジタル・トランスフォーメーションの推進』によると、DXは以下のように定義づけられています。
『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』

デジタル化によってトランスフォーメーション(変革)させるのは、製品、サービス、ビジネスモデルという「企業の売り物」だけでなく、業務、組織、プロセス、企業文化・風土という「企業組織・企業活動」におよびます。そして、その目的は、競争上の優位性、すなわち「他の会社よりも儲かる仕組みをつくること」と言い換えることができます。

2.デジタル化との違い

デジタル化との違い

よく「DX」は「デジタル化」と混同されます。勿論、どちらもデジタル技術を用いることに違いはありませんが、デジタル技術を用いる目的が両者では大きく異なります。

「デジタル化」は業務の効率化を目的としています。
例えば、「印鑑を廃止して電子印鑑にする」とか「紙の申請書類を廃止してインターネットでの申請を可能にする」などが考えられます。
コロナ流行初期に話題に上がった、印鑑を押すためだけに出社しなければならない等の問題を解決でき、それによって従業員の業務の効率化が図られます。

「DX」は、新しいビジネスの仕組みを構築することを目的としています。
例えば、「DVD等のレンタルショップを廃止して、サブスクリプション制にする」などが考えられます。
企業としては、延滞金の回収や、未返却、破損等の問題の解決を省くことができ、顧客からすれば、わざわざお店まで借りに行ったり、返却しに行ったりする手間が省けます。
現在、サブスクリプション制の動画配信サービスは数多くありますが、これらは、まさにこれまでになかったビジネスの仕組みを構築していると言えます。

3.なぜDXが必要なのか

なぜDXが必要なのか

現在、度々目や耳にする「DX」ですが、なぜ今、必要とされているのでしょうか。

それは、現代の消費者活動の変化にあります。
小型かつ高性能のスマートフォンの普及に加え、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の世界的な流行で多くの人が外出を自粛するようになりました。
そして、それらは消費者活動の変化を余儀なくします。

買い物をインターネットだけで完結する人や機会が増えたことで、インターネットショッピングの利用頻度が急激に増加しました。フードデリバリーも同様です。わざわざレンタルショップまで赴く必要が無い、有料動画配信サービスも大いに躍進しました。
いわゆる「おうち時間」を快適に過ごすというニーズに応えるためには、消費者活動に合わせたビジネスモデルの変化が重要になります。
今後、既存のビジネスだけでは事業の継続が難しくなることも考えられる以上、新たなビジネスモデルの構築として「DX」が必要とされるのは必然とも言えるでしょう。

4.世界と比べた日本のDX推進状況

過去5年間のアジア太平洋地域の国・地域の総合順位

スイスの国際経営開発研究所(IMD)は、1年に1度、世界各国のデジタル競争力を「知識」「技術」「未来への準備」の3つの観点で評価し、『世界のデジタル競争力ランキング』を発表しています。

63ヶ国・地域を対象にした2022年の調査と評価では、日本は総合で29番目(知識:28位、技術:30位、未来への準備:28位)のデジタル競争力と評価されました。
アジア太平洋地域で調査対象となっているのは下記の13の国と1つの地域です。
以前から評価の高いシンガポールと、評価が伸び悩んでいるタイ以下の5国を除いた7ヶ国1地域で見ると、特に大きな伸びを見せている中国を始め、堅調な伸びを見せている韓国、香港特別行政区、台湾、および復調を見せるオーストラリアは、概ね順調に世界でのデジタル競争力を育めていると感じます。
反面、日本はニュージーランドやマレーシアと同じく、評価が下降傾向のグループと言わざるを得ません。

2022年調査におけるアジア太平洋地域の国・地域と総合順位
  • シンガポール(4位)
  • 大韓民国(8位)
  • 香港特別行政区(9位)
  • 台湾(11位)
  • オーストラリア(14位)
  • 中華人民共和国(17位)
  • ニュージーランド(27位)
  • 日本(29位)
  • マレーシア(31位)
  • タイ(40位)
  • インド(44位)
  • インドネシア(51位)
  • フィリピン(56位)
  • モンゴル(62位)
日本のITの現状

評価の大枠である「知識」「技術」「未来への準備」を個別に見ると、「知識」は2018年の18位から28位へ、「技術」は23位から30位へ、「未来への準備」は25位から28位に下降しました。

また、大枠の3項目を構成する、54個の審査基準を見ると、海外に比べて強みとなる項目もあるものの、調査対象国・地域において最下位と評価された「弱点」と呼べる項目も複数ありました。

日本の評価で特に低かった項目には、「国際経験」(63位)、「デジタル・技術スキル」(62位)、「機会と脅威に即応できる組織体制」(63位)、「俊敏な意思決定・実行」(63位)、「ビッグデータやデータ分析の活用」(63位)などが挙げられており、十分なスキルを持ったIT人材が不足していることや、保守的または硬直化した企業の体質などが、日本におけるDX推進の障害となっていると考えられる原因が挙げられた印象です。

5.まとめ

「DX」についての情報整理を目的とした今回のコラム第1回目は、DXの定義や意義をおさらいした上で、他国と比較して長所もあれば短所もある日本のDX推進の現状についてまとめてみました。
第2回目となる次回は、日本と中国の具体的なDX推進事例を基に、DXへの取り組み方についてもう少し深く観察してみたいと思います。
  DXの鍵はデータ連携にあり!