SAP Business One標準の取込ツールの処理速度

SAP Business One標準の取込ツールの処理速度

SAP Business One2024.08.02

SAP column

はじめに

SAP Business Oneには、標準で使用できる取込ツールが存在します。
それが『SAP Business One Data Transfer Workbench』です(以下ではDTWと呼称)。
このツールでは指定されたフォーマットで取込データを作成すると、一括でマスタ・伝票の登録や更新が行えます。
今回はこのツールの処理時間について検証していきます。

受注伝票3万件を登録する場合

今回受注伝票3万件分のデータを用意し、こちらを登録していきます。
取込モードは、「Cancel Import and Perform Rollback When One or More Erros Occur」モードと 「Ignore All Errors And Process Valid Recors」モードの二つで処理速度を計測していきます。
なお、SAP Business Oneのバージョンはやや古いですが「9.2 PL08」になり、計測方法は私がストップウォッチを直接操作します。

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「Import」を押してから「Finish」が表示されるまでの時間になります。
データ件数が多いとデータの初期処理に時間がかかり取込処理までに若干間が空きますが、その時間を含みます。

「Cancel Import and Perform Rollback When One or More Erros Occur」モード
1時間4分14秒
「Ignore All Errors And Process Valid Recors」モード
1時間3分47秒

「Ignore All Errors And Process Valid Recors」モードのほうが短いと予想していましたが、意外とほぼ差がありません。
ロールバック処理が発生した際の時間は今回計測していないため、ノーエラーの場合はほぼ同等の速度になるということですね。
以前のバージョンではファイルサイズが大きくなると後半になるにつれて処理速度が遅くなるイメージでしたが、見てる限りはそのような感じもありませんでした。
ですが、せっかくなので次はファイルを分割した場合の実行速度も計測してみましょう。

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今回は3万件のデータを4分割してみました。
速度は各モードで同等だとわかりましたので、今回は「Ignore All Errors And Process Valid Recors」モードでのみ計測します。

「Ignore All Errors And Process Valid Recors」モード
1:14分46秒
2:14分39秒
3:15分27秒
4:15分20秒
計:1時間12秒

今回用意したデータは後半のほうが明細数が多いため、若干多めに時間がかかっていますが全体でみればわずかに処理時間が短縮されています。
しかし実際にはデータを分割する手間や取込ファイル選択などのオーバーヘッドがありますので、わざわざ分けて取り込むほどの必要性はないものと思います。
ただし、あまりにも取込ファイルが大きすぎるとエラーで落ちることもあるためその際は分割が必要です。

おまけ

今回3万件のデータにおよそ1時間程度の取込時間がかかっていますが、さらに短縮する方法はないでか頭をひねってみました。

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DTWの二刀流です。
同時にDTWを複数実行する使い方は本来推奨されません。
しかしデータ登録順は気にせず、登録できるデータから登録するという状況では処理時間を最優先する場合には使えるかもしれません。
ということで、おまけとしてこちらの処理時間も計測しておきましょう。
多少のエラーは再取り込みで対応する前提ですので、ロールバックモードは使用しません。

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「Ignore All Errors And Process Valid Recors」モード
48分53秒

ということで、1度に3万件取り込む場合と比べて23%程度の高速化です。
(念のため重ねてお伝えしておきますがこのような取込方法は本来推奨されませんよ)

まとめ

今回はSAP Business Oneの標準ツールであるDTWの処理速度についてお伝えしました。
実業務ではここまで大量の伝票登録が発生する場合ではアドオンの開発などで自動化することが多いですが
その場合でも内部的には似たような処理を行っていますので、処理時間のおおよその参考にはなるかと思います。
今回用意したデータは比較的重めの受注データだと思います。
SAP Business Oneでの大量データの登録について検討中の方のお役に立てましたら幸いです。