SAP Business Oneの多通貨対応とは?結局何ができる?

SAP Business Oneの多通貨対応とは?結局何ができる?

SAP Business One2024.11.21

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はじめに

昨今は中堅中小企業様におかれても、海外の得意先や仕入先との外貨での取引が多くあると思います。
SAP Business Oneは、SAP社が提供する中堅中小向けERPパッケージであり、多通貨に対応していると言われています。
では、SAP Business Oneが実際にどのような多通貨対応機能をもっているのか、何ができるのかをご紹介いたします。

通貨の定義

SAP Business Oneでは、取引で使用する通貨をマスタに定義します。
初期状態でいくつか通貨が定義されていますが、不足している場合は追加することができます。
日本円はJPYとして定義されていますが、\にしたい場合は、\をマスタに追加します。

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自社の基本通貨設定

自社の基本通貨を通貨マスタから選択します。
日本の場合は、基本日本円になると思いますが、財務諸表を何の通貨で出力するのかという定義になります。

為替レートの定義

自社の基本通貨と外貨間のレートを、為替レートマスタに定義します。
レートの定義は日単位となっていますが、多くの会社様は会社レートという考え方を採用して、
1ヶ月分のレートを固定しています。その場合は1ヶ月分同じレートを事前に定義します。

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価格表で使用する通貨の定義

価格表ごとに、価格を定義する通貨を通貨マスタから選択します。
1つの価格表で、最大3種類(主要通貨、追加通貨1、追加通貨2)の通貨を選択することができます。

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通貨ごとに商品の価格を定義

選択した通貨ごとに、各商品の価格を定義します。

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取引先マスタの通貨設定

取引先マスタで、この取引先との取引通貨を通貨マスタから選択します。

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取引先マスタの価格表設定

取引先マスタで、この取引先はどの価格表から価格を取得するのかを定義します。

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外貨取引伝票の登録

マスタ類の設定が完了したら、伝票を入力してみます。
ここでは、売掛請求書というSAP Business Oneの売上伝票のを入力します。
まず、取引先を選択すると、伝票の通貨が取引先マスタから、転記日付の為替レートが為替レートマスタから自動入力されます。

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次に商品を選択すると、伝票の通貨に合わせた通貨価格が自動入力され、合計金額も伝票の通貨になります。

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売掛請求書を登録すると自動仕訳が作成されますが、外貨取引の場合は外貨と基本通貨(日本円)の両方で仕訳が起こります。
このとき基本通貨の金額は、外貨金額と為替レートにより自動計算されます。

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外貨建て債権の入金

外貨の売掛請求書を登録すると、外貨建ての売掛金が計上されます。
外貨建ての売掛金の入金日は、通常売掛請求書の日付と異なります。そのため、日付の違いにより為替レートにも 違いが発生する可能性があります。 入金画面で取引先コードを選択すると、入金の転記日付の為替レートが為替レートマスタから自動入力されます。
ただし、通常入金時レートは銀行指定のレートとなるため、入金のレートは手動で変更することになると思います。

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入金を登録すると自動仕訳が作成されますが、外貨取引の場合は外貨では売掛金計上額と入金額に差額が発生していなくても、 基本通貨(日本円)では売掛金計上額と入金額に差額が発生します。
SAP Business Oneでは、この差額を自動的に為替差損益として計上します。

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まとめ

今回は外貨取引のための各種マスタ定義、外貨建て売掛金計上、外貨入金までをご紹介しました。
売掛金計上時と入金時でレートが違う場合、SAP Business Oneでは為替差損益が自動計上されます。
この為替差損益は、実際に入金があって計上されるため、為替実現差損益などといわれます。
これに対して、入金はないが今現在のレートで外貨建て売掛金の日本円換算額を再計算して、為替差損益を自動計上する 機能もSAP Business Oneは持っています。この機能により計上される為替差損益は、為替評価差損益などと言われます。
また、今回は外貨価格について、1つの価格表に3つの通貨の価格を持たせる形にしましたが、お客様によっては、 1価格表は1通貨として、通貨が違えば価格表をわけて登録されている場合もあります。
取引先マスタについても、1つの通貨ではなく、取引ごとに通貨が違うというパターンがある場合は、”全通貨”という 通貨設定もあります。
そのほか、外資系企業様で財務諸表を基本通貨(日本)だけでなく、別の通貨(米ドルなど)でも出力したいというご要望が ある場合、システム通貨という機能で対応できます。

ソルパックはお客様のご要望に応じて、どのような運用方法、マスタ構造にすればよいかご提案させていただきます。