IBMのオフコン④ IBM System/38について
1978年10月24日。日本全土にブームを巻き起こしたタイトー社のゲーム・スペースインベーダーの発売から2か月。
IBMはアーキテクチャーをSystem/34から大幅に変更した『IBM System/38』を発表しました。
System/38は究極のビジネス用途のシステムを追求して設計されたため、非常に画期的かつ先進的なテクノロジーが盛り込まれました。
アドレスの48bit化への拡張に加え、SLS(Single-Level Store)アーキテクチャーが実装されたため、ストレージアクセスが極めて容易になりました。
SLSとはIBM i界隈では極めて有名ですが、要はCPU内のキャッシュを含めたメモリやストレージなどの様々な記憶装置を、単一の巨大なアドレス空間で管理する仮想記憶のメモリ管理技術です。
さらにRDBMS(リレーショナルデータベース)の実行メカニズムをファームウェアで標準実装することでデータベース処理の大幅な高速化に成功しました。
また、アプリケーションをハードウェアから分離・独立させる仕組み(Machine Interface...後のTIMI:Technology Independent Machine Interface)でアプリケーションの永続性を実現したり、複数人が複数アプリケーションを同時に稼働させても誤作動しないオブジェクト・アーキテクチャを実装しました。
それら数々の先進的な技術はユーザーに多大な恩恵をもたらすことに成功します。ただ、あまりにも既存のアーキテクチャから乖離してしまった結果、System/38はSystem/34の後継機であるにも関わらず、System/34やそれ以前のシステムとの互換性を失ってしまいました。
その結果、発売から最初の5年間で推定20,000台のSysytem/38を販売したとのことですが、性能の向上に伴って価格が非常に高くなってしまったことも相まって、利益率や収益性は高かったものの最終的な出荷台数は低調に終わった様です。
性能の向上や未来に繋がる技術的投資も、結局は低コストの内で実現しなければセールスに繋がらない厳しい現実を突き付けられた印象です。