IBM iの継続か、ERPへの移行か二者択一の選択に悩む
JRCは1994年にIBM i(当時のAS/400)を導入し、生産管理および販売管理を軸とした期間システムを自社開発型で構築した。当初はRPG Ⅲで開発し、2011年からは「Delphi/400」(ミガロ.)を使って生産管理系を中心にGUI画面へ移行させている。そんな同社が、「JRCにとってのDXとは何か」を考え始めたのは2019年のことである。
「当社のシステム環境は信頼性の高いIBM iにすべてのデータを格納することを前提に、システムを設計してきました。IBM iの中でデータが完結し、安全性が高く、取り扱いも容易でしたが、昨今はクラウドサービスや製造IoTの導入もあり、全データをIBM i に取り込む設計が難しくなりつつありました。このことが、システムの柔軟性や拡張性を阻害していると感じ始めました」と、経営企画室の山口尚之室長は語る。
これに加えて、IBM i 開発者の高齢化問題も指摘されていた。IT部門に相当する経営企画室には7名のシステム担当者が所属するが、そのうちRPGで開発が可能な人員は2名。1名は定年が視野に入り始めた年代で、若手技術者をIBM i 向けに教育するのも現実的には難しかった。
「IBM i =レガシー」というイメージが濃厚で、IBM i を使っている限り、DXは実現不可能という極端な意見も聞かれたという。「IBM i の継続か、ERPへの移行か」という二者択一に悩むなか、結論から言うと、同社はIBM i の継続を決め、2021年にPower Systemsをリプレースしている。
「現時点ではハードウェアのスペック面、セキュリティ、運用性、保守ノウハウのいずれから見ても、IBM iは最も安全で親和性の高い環境であると判断しました。ただしIBM i にメリットがあれば継続するが、メリットがなければ撤退する。IBM i から動けないから、仕方なく継続するのではなく、IBM i に縛られないシステム構成を目指し、次のリプレース時期となる2028年には、その時に最適と判断したシステムへスムーズに移行できる環境を整備しようと決断しました」と、経営企画室の長村恵資課長代理は指摘する。
そしてIBM i の運用ノウハウを維持しつつ、DXを実現する手段として注目したのがデータ連携ツールであった。