コンサルティング

第6回 インセンティブ導入のポイント(その2)

2014/5/26

前回は営業職の目標設定について述べた。ここでは、SE(プログラマー)、プロジェクトマネジャー、コンサルタントを技術職と定義して、目標設定の考え方を述べていきたい。

プログラマー、あるいは派遣契約に従事するSEは裁量労働制の対象とは認められていないというご指摘があるかもしれないが、インセンティブの対象にするか否かは別の話なのだ。
裁量労働制の対象外となる社員には時間外手当を支給することになるので、インセンティブ支給額との調整は必要となるが、基本的に一人前の技術者になったらインセンティブの対象者として扱うべきだと考える。
営業職の目標設定はシンプルで、特に目新しさが感じられなかった方がほとんどだと思うが、難しいのは技術職である。

技術職の場合は、営業職のように会社の目標を縦割りでブレークダウンするわけにはいかない。なぜならば、サービス業は人工の世界。1人で稼げる額には限界 がある。営業職は”どれだけ仕事を獲ってくるか”、技術職は”どれだけ稼ぐか”というように、分けて考えなければならない。言い換えれば、営業職はトップダウン、技術職はボトムアップで考えればよい。ボトムアップとは、個人の人件費をベースに考えるということ。給与に福利厚生費を含めた人件費に、会社の総 経費、利益目標を人件費の額に応じて按分し、売上総利益額として、個人に年間目標額を設定するのがよいと考える。担当分野によって、教育などのコストが多くかかっている技術者は、個人目標も高く設定することになるだろう。それでも当然のことながら、技術者全員の個人目標を合計しても会社の目標には到達しな い。そこで、技術者にもグループ目標をミックスで設定することが必要になる。グループ目標は営業職と同様に会社の目標を縦割りでブレークダウンすればよい。個人目標の合計とのギャップは、ビジネスパートナーとの協業における外注費売上や製品販売などにより、埋めていかなければならないということだ。営業 が100%グループ目標であるならば、技術職は個人目標50%、グループ目標50%という比率で配分すればよい。以下にこのケースで設定した支給テーブル の例を記載する。

(図1)支給テーブルの例

もちろん比率は柔軟に変更するできるようにルール化も必要だ。年間を通じてグループで単一プロジェクトのみを実施する場合は、100%グループ目標でもよい。

必ずと言っていいほど良くお受けする質問が、プロジェクトに入る社員の個人目標はどうするのかということ。上記とは異なり、個人目標を設定した後に、年度の途中でプロジェクトが始まるといったケースだ。

この場合は、プロジェクトのスタート時に計画値として売上総利益を個人に割り振り、計画通りにプロジェクトが終了すれば、どれだけの数字が業績に反映されるかを予め合意しておかなければならない。計画通りにうまくいかないのがプロジェクト。終了時に計画よりも数字が悪化した場合は、原因を分析し、個人の業績に反映しなければならない。これらはプロジェクトマネジャーが試算し、部長が承認するというプロセスも必要だ。このような場合は、自分のいいように数字を操作しないためにも、プロジェクトマネジャーにはグループ目標のみを設定しておくのが妥当だろう。

導入にあたって考えるべきことはまだまだ山ほどあるが、個人目標とグループ目標の組み合わせてを考慮することで、基本的に技術職にもインセンティブの導入は可能である。

重要なことは、社員の不満が出ないように、業務の実態に合わせて公平・公正に考えなければならないといこと。もちろん、会社の利益を損なわない範囲でしっかりとシミュレーションも行わなければならない。